こんにちは、社長のためのAI戦略です。「サイバー攻撃の調査にどれだけ時間がかかっているか、把握していますか?」そう問われて即答できる経営者は多くないかもしれません。今回はOpenAIが公式に発表した、セキュリティ企業Sophosによる「OpenAI Daybreak」活用事例を取り上げます。以下はOpenAIが公開した情報に基づく内容です。
30秒で分かるポイント
- Sophosは、エージェントを使う案件の平均対応時間を約38分から約89秒に短縮したと発表
- MDR案件の52%をAIがエンドツーエンドで解決できるようになった
- 人間の判断を残す3つの運用モード(Notify・Collaborate・Authorise)を維持
- セキュリティ人材不足への対応として、AIで処理能力をスケールさせる狙いがある
1何が発表されたか
OpenAIは、サイバーセキュリティ企業Sophosが「OpenAI Daybreak」を活用し、脅威調査・対応の仕組みを大きく変えたことを公式ブログで発表しました。Sophosは625,000以上の組織をセクター・地域を超えて保護しており、CTOのJohn Peterson氏は、40年にわたるサイバーセキュリティ事業の中で蓄積した専門知識があると述べています。
OpenAI DaybreakはOpenAIのモデルとSophos独自の脅威インテリジェンス・対応プレイブック・セキュリティの専門知識を組み合わせる取り組みです。単なる分析ツールの追加ではなく、Sophosが保護するすべての顧客に対して、自社の専門知識の効果を拡大することが目的だとされています。
2Sophos Fusionと膨大なデータ処理の実態
取り組みの中心にあるのは、Sophosの「AIネイティブなサイバー防御システム」であるSophos Fusionです。これにはSophos Managed Detection and Response(MDR)が含まれます。Sophos Fusionは500以上のサードパーティ統合からのセンサーデータと、Sophos自社製品のデータを統合しています。
これらのセンサーは1日に兆単位のイベントを生成しており、Sophosはそれを9つのセキュリティオペレーションセンターが調査する約1,000〜2,000件の案件にまで絞り込んでいます。
3エージェントによる調査プロセスの変化
Daybreakを通じて構築されたエージェントは、案件の処理方法を変えました。調査エージェントが顧客のコンテキスト、検知内容、侵害の痕跡(IoC)、関連する脅威インテリジェンスを案件ごとに収集します。その後、計画モデルが「計画・実行・レビュー」のループを作り、調査計画の立案、各ステップの実行、分析官がレビューするための推奨対応アクション付きサマリーの作成までを行います。他のエージェントが対応の一部を実行することもあります。
Daybreak導入前、案件の調査・対応は主に人間の専門知識に依存しており、平均で約38分かかっていました。この約38分という対応時間自体が、プロのセキュリティオペレーションセンターの96%を上回る成績だったとされています。つまりここでの「96%」は、Daybreak導入前の約38分という対応時間が、他のプロのセキュリティオペレーションセンターの96%よりも優れた成績だったことを示す数値です。それが、Daybreakプログラムで構築したエージェントを使う案件では、平均対応時間が約38分から約89秒まで短縮されたとPeterson氏は説明しています。なお、見出しの「96%短縮」は、約38分から約89秒への短縮を表す数字で、上の96%(他のSOCとの比較)とは別のものです。
Peterson氏
「Daybreakプログラムを通じて構築できたエージェントのおかげで、これらのエージェントを使用する案件の平均対応時間は約89秒まで低下しました。現在取り扱う案件の約半数が、Daybreakモデルを使って開発したエージェントによって自動化されています」
4人間の判断を残す仕組み
Sophosは、AIによる自動化を進めながらも、人間の判断を残す仕組みを組み込んでいます。MDRサービスには3つの運用モードがあります。「Notify」はSophosが調査・推奨対応を行い顧客が実行するモード、「Collaborate」はSophosと顧客が協働して対応を決めるモード、「Authorise」はSophosが顧客に代わって直接対応するモードです。
この境界は、作業が人間とエージェントのどちらによって完了されたかにかかわらず同じように適用されます。Sophosは自動化によって迅速に動き、分析官の時間をより有効に使いますが、破壊的な可能性のある行動には依然として適切な水準の人間の監督が求められます。Peterson氏は「エージェントに任せることに不安を感じるものは、すべて人間の判断に引き渡されます」と述べています。
5経営者が知るべきこと
今回の事例が示すのは、AIエージェント導入が必ずしも「人間を置き換える」ものではなく、「専門知識をスケールさせる」手段になり得るという点です。Sophosは、MDR案件の52%をエンドツーエンドでAIによって解決できるようになったとしていますが、これはSophosのアナリストがキャリブレーションした基準の範囲内での成果です。
経営者にとっての論点は、AI導入によって処理能力を増やす一方で、どこまでを自動化し、どこから人間の承認を必須とするかの線引きをどう設計するかです。Peterson氏は、セキュリティリーダーへの助言として「まず組織のセキュリティの基本に立ち返ること」を挙げています。パッチ適用(ただし、パッチが対応するのはベンダーが把握している脆弱性だけだと、同氏は補足しています)、エンドポイント保護、多要素認証(MFA)、ネットワークセグメンテーション、強固なセキュリティオペレーションといった「多層的なセキュリティアプローチ」の重要性は、AI活用が進んでも変わらないとされています。
6自社に当てはめる3つの質問
- 自社のセキュリティ運用で、AIエージェントに任せてよい判断と、必ず人間が承認すべき判断の境界線はどこか
- セキュリティ人材の採用が難しい中、処理能力をAIでスケールさせる選択肢を検討できているか
- パッチ適用・MFA・ネットワークセグメンテーションといった基本的なセキュリティ対策は、AI活用の議論以前にどこまで徹底できているか
💡まとめ
- Sophosは、OpenAI Daybreakで構築したエージェントを使う案件の平均対応時間を、約38分から約89秒に短縮したと発表
- MDR案件の52%をAIがエンドツーエンドで解決できるようになった一方、破壊的な操作には人間の判断を残す仕組みを維持している
- セキュリティリーダーへの助言として、AI活用以前に「セキュリティの基本」の徹底が強調されている
- 自社でもAIエージェント導入時の自動化範囲と人間の承認プロセスの設計が今後の論点になる
## 出典
- [Sophos cuts threat investigation time by 96% with OpenAI Daybreak(OpenAI・2026-10-09)](https://openai.com/index/sophos)