こんにちは、社長のためのAI戦略です。AIが生成する情報の「公平性」や「悪用対策」について、自社のAI活用ルールを考えるうえで気になったことはありませんか。今回は、Anthropicが2026年10月14日に公開した、2026年米国中間選挙に向けたClaudeの選挙関連の安全対策に関する発表を取り上げます。以下はAnthropicが公開した情報に基づく内容です。
30秒で分かるポイント
- 米国のClaude.aiの会話のうち、政治・公共政策関連は約5.75%、選挙・投票関連は約0.51%を占める
- 誰に投票すべきかを尋ねる要求はわずか約0.01%で、選挙ポリシー違反の要求は約0.002%
- 最新モデルのClaude Opus 5.5・Sonnet 5.5・Haiku 5.5はAnthropic自身の政治的公平性評価で99%のスコアを記録
- 外部調査で、単発の悪意ある依頼は拒否できる一方、複数の無害な依頼に分割された悪質なキャンペーンを見逃す可能性があることが判明
1何が発表されたか
Anthropicは、2026年の米国中間選挙を前に、Claudeの選挙関連の安全対策をどのように強化してきたかをまとめた発表を公開しました。今年初めに公開した選挙対策のアップデートを踏まえ、政治的偏りの測定・防止、悪用の検知、正確な投票情報への誘導という3つの柱で、取り組みの進展を説明しています。
発表の根拠として、Anthropicは自社の分析ツール「Anthropic Insights」を用いて、2026年9月21日から27日までの1週間に収集した米国のClaude.aiの会話約25万件を分析しています。
2Claudeは選挙関連でどう使われているか
Anthropicの分析によれば、米国のClaude.aiの全会話のうち、政治・公共政策・社会問題に広く関わる会話は約5.75%を占めます。この中には、ニュースを追う、公共政策の学術的・専門的な調査を行う、候補者について学ぶ、行政サービスを利用するといった用途が含まれます。選挙や投票に特化した会話は約0.51%でした。
誰に投票すべきか、何に投票すべきかをClaudeに尋ねる要求は、約0.01%の会話にしか現れませんでした。むしろ多く見られたのは、候補者の政策的立場を調べるなど、利用者自身が結論を出す助けになるような質問だったとAnthropicは説明しています。選挙の公正性に関するポリシーに違反する要求は、さらに少ない約0.002%の会話にとどまりました。なお、Anthropicは、選挙日が近づくにつれて、政治・選挙関連の質問の割合は増えると見込んでいます。
3信頼できる情報源への接続
Anthropicは、選挙当日に向けて、Claudeとの会話内で信頼できる情報を得られる仕組みを2つ追加しました。有権者登録や投票所、選挙日についてClaude.aiに質問すると、無党派の団体Democracy Worksが提供するTurboVoteへのリンクを含むバナーが引き続き表示されます。
さらに2026年10月後半からは、米国のClaude.aiユーザー向けに、Democracy Worksが収集する公式の投票情報を回答に直接組み込む機能を開始します。投票所の場所や持参すべき身分証明書について質問すると、会話を離れることなく、州ごとの具体的な回答が得られるようになります。加えて、選挙当日とその後の数日間は、最新の公式な得票数や選挙結果も会話内に表示されるようになります。
4政治的バイアスの測定と改善
Anthropicは、モデルを公開する前に政治的偏りについて広範なテストを行っていると説明しています。最新モデルのClaude Opus 5.5、Sonnet 5.5、Haiku 5.5は、Anthropic自身の政治的公平性評価で99%のスコアを記録し、これまでで最も偏りが少ないモデルになったとしています。また、これらのモデルは政治的な議論により積極的に応じるようになり、拒否する回答も減少したとのことです。
Anthropicはこの取り組みの一環として、独立した3つの組織に依頼し、異なる角度・手法でClaudeの言論の扱いを調査しました。ヴァンダービルト大学の独立シンクタンクFuture of Free Speechは数百件の論争的な話題についてClaudeをテストし、Foundation for American Innovationは左右から対になる質問でClaudeの回答を比較しました。この2つの評価では、多くの回答が実質的に依頼に応じる「強い」回答と評価されました。3つ目のCollective Intelligence Projectは、米国・英国・インドの2,000人超への調査をもとに、3段階のプロセスで、健康から政治まで幅広いセンシティブな話題の扱いについての原則の提案、テスト対象の話題の特定、モデルの回答を判断する基準づくりを行いました。これらの評価では、Claudeがまだ十分でない点も明らかになりました。Future of Free SpeechとCollective Intelligence Projectは、Claudeが依頼を拒否することはまれなものの、頼まれていない注意書きや反論をときどき付け加える傾向があることを共に発見しました。また、Foundation for American Innovationは、Claude Sonnet 4.5が常に均等にヘッジ(留保)をかけているわけではなく、右寄りの主張をより和らげる傾向があったと指摘しています。
Anthropicは、直接的な二択の質問や短い回答を求める質問への対応を改善し、注意書きや反論を追加するタイミングと方法を見直すことで、政治的立場に関わらず一貫した対応ができるよう取り組んでいると説明しています。
5悪用の定義とポリシーの更新
Anthropicの利用規約(Usage Policy)は、有権者を欺いたり選挙を妨害したりする目的でのClaudeの利用を禁止しています。候補者や投票方法に関する虚偽情報の拡散、選挙管理者へのなりすまし、投票率を抑制しようとする行為などが対象です。この規約は毎年更新されており、直近の更新では、選挙関連ルールが適用される範囲とされない範囲を明確にし、新たな事例を追加しています。
一方でAnthropicは、多くの選挙キャンペーンがプレスリリースの作成や資金調達メールの作成、討論会の準備、投票率データの分析、有権者向け広報資料の作成といった正当な日常業務にClaudeを利用していることも認識しており、こうした利用とポリシーの関係を説明するガイドを公開したとしています。禁止される例としては、実在の人物になりすます偽のSNSアカウントの作成や、エンゲージメントを水増しするための大量のコメント生成、独立したメディアを装う記事の作成などが挙げられています。
6防御体制のテストと強化
Anthropicは、選挙関連の悪用を検知するよう訓練された自動分類システムを運用しています。その実効性を検証するため、独立した調査機関であるInstitute for Strategic Dialogue(ISD)およびMcCain Instituteと連携し、米国、イスラエル、ブラジルでの防御力を検証しました。
調査では、単発の有害な依頼に対してはClaudeが確実に拒否する一方、一つ一つは無害に見える複数のタスク(読者層の調査、ニュースサイトの構築、コンテンツ作成、配信計画など)に分割された悪質なキャンペーンは見逃す可能性があることが判明しました。これを踏まえ、Anthropicは新たな分類システムを追加し、偽のSNSアカウントやニュースサイトの構築、金銭目的の選挙関連の不正スキームなど、複数ステップにまたがる新しい手口への対応力を強化したとしています。また、外国の国家主体による選挙関連の悪用の検知能力の強化や、選挙インフラ・キャンペーンに対するサイバー防御の強化も行われました。
7これまでに判明した事例
Anthropicの最近の脅威インテリジェンスレポートによれば、政治的・国家関与・商業的な行為者が、影響工作の計画からコンテンツ作成、発信用プラットフォームの構築まで、ほぼすべての段階でAIを組み込むようになっているとされています。
具体的な事例として、海外を拠点とする偽ニュースサイトの運営者が、ロシア・イラン・北朝鮮の主張に沿う米中間選挙の報道をClaudeで作成していたケースが確認されました。また、選挙に乗じて金銭的利益を得ようとする行為者が、米国の読者を引きつけ広告収入を得る目的で、捏造されたニュースなどのコンテンツをClaudeで作成していたケースも観測されています。Anthropicはこれらの事案に関与したアカウントを停止し、同種の悪用を検知する能力を改善したとしています。
8経営者が知るべきこと
Anthropicのこの発表から分かるのは、AI企業が政治的公平性や悪用防止について、第三者機関による検証も交えながら継続的に取り組んでいるという姿勢です。 自社がAIサービスを業務に取り入れる際、提供企業がどのような安全対策・利用規約の運用をしているかは、リスク管理の観点で確認しておく価値があります。
また、一見無害な作業を複数のタスクに分割して悪用するパターンが調査で明らかになった点は、自社の社内AI利用ルールを考えるうえでも参考になります。単発の依頼だけでなく、複数の依頼を組み合わせた際にどのような結果が生まれうるかにも注意を払う必要があります。利用規約は毎年更新されるとAnthropicは説明しているため、自社が契約しているAIサービスの規約変更を定期的に確認する社内プロセスを持つことも重要です。
9自社に当てはめる3つの質問
- 自社が契約しているAIサービスの利用規約(Usage Policy)は、誰が・いつ確認する体制になっているか
- 自社の広報・マーケティング活動でAIを使う際、なりすましや虚偽情報の作成につながる使い方をしていないか、ルールが明文化されているか
- 一見無害な業務指示でも、組み合わせることで問題のある結果を生む可能性について、社内のAI利用ガイドラインで注意喚起しているか
💡まとめ
- Anthropicは2026年米中間選挙に向け、Claudeの政治的公平性評価・投票情報の提供・悪用対策を強化
- 選挙関連の会話は全体の約0.51%で、投票先を尋ねる要求は約0.01%、ポリシー違反の要求は約0.002%
- 最新モデルはAnthropic自身の政治的公平性評価で99%のスコアを記録し、第三者機関による検証も実施
- 無害に見える依頼に分割された悪質なキャンペーンを見逃す可能性が見つかり、新しい検知の仕組みを追加した
- 利用規約は毎年更新されており、自社のAI活用ルールの点検機会として参考にできる
## 出典
- [Preparing for the 2026 US midterms(Anthropic・2026年10月14日)](https://www.anthropic.com/news/2026-us-midterms)